【GGJ2014】OculusRiftは僕達のためのデバイスだった!
48時間でゲームを作る世界規模のお祭り『Global Game Jam 2014(GGJ)』に参加してきましたよ!今年は夢かなって見上げるゲームが出来上がりました。さっそく遊んでいただける方はこちらからどうぞ。
昨年、一昨年に続いて3度目の参加となりまして、昨年の思い出はこんな感じでした。
今年の札幌会場は、昨年60名から80名に膨れ上がり、相変わらず国内2番目の規模。そろそろゲーム開発の中心地は札幌に移すべき。会場の池上学院グローバルアカデミー専門学校、総合ゲーム学科からも多数の学生達が参加していましたよ。
三度目の意気込み
2年連続一生懸命やったので、今年は「ゆるーく参戦して無事完成しよう」を目標にしていました。 もう3DCGも作らない、パソコンすらも使わないGGJもいいね〜なんて話してて。・・・でも結局、今年も一生懸命やっちゃいました。フタを開けてみれば面白い人達が集まっていて、ユルいゲーム作るには勿体無い開発力だったのです。作れる人は十分に居るし、使えるネタが豊富だったので、CG素材作りより企画に集中させてもらった楽しい3日間でした。
今回の武器は以下のとおり。
- 粘土
- 絵の具
- 無限レッドブル
- OculusRift
まるで仕込みのような偶然が一致して、最高の体験を作り上げることに成功しました。せっかくなので、この記録を残しておきましょう。
企画
今年は本当に何も考えていませんでした。事前ミーティングにもウチのチームは集まらず、悪巧みのしようもありません。ただ、あまりにセオリー通りのゲーム開発も退屈なので、前日には粘土や絵の具やNERFを用意。
そんな事をしているとアイデアは勝手に生まれてくるもので、せっかく早めに布団かぶったにもかかわらず、2つのゲームアイデアが頭のなかで動いていました。
ひとつは、小人へ向かって直進する巨人を誘導する迷路レース。
上段と下段で別の障害があって複雑になる感じ。
不慣れな粘土細工で作ってもらったら面白そう。
ひとつは、ペットボトルロケットの様に初速が一番早いレースゲーム。
徐々に減速し、チェックポイントを通過すると再加速する仕組みで、
各チェックポイントで余したタイムの合計を競う。
何周する昨今のレースゲームより、アーケードのレースゲームが熱くって。
GGJ 2014 札幌:当日
テーマが発表された。英語を読み上げるためだけにgeekdrumsくんが呼び出される。
和訳すると「私達は物事をあるようには見ないで、私達が在るように見ている。」
となるそうな。アナイス・ニン - Wikipedia
メンバーそれぞれ何を出来る人なのか確認しあって、さっそくアイデア出し。ネタはあっても最初は皆で話し合って、JAMを楽しみます。あまり苦労したくないからキューブみたいなキャラクターをコロコロ動かすとか、テーマは和訳忘れたし背景含めた画像だからテクスチャに貼っとけばオッケーとか。各々がゲーム作りたいと思ったキッカケとか、後に実現することとなる「つい身体が動いてしまうようなゲーム」とか。
いろいろ話し合っても具体的な形は見えてこず、「和牛先生はどんなの考えて来たんですか?」と聞かれたので昨晩のアイデアを話したところ、でっかいのとちっさいのが受け入れられて制作が決定しました。今回も僕の遊びたいゲームが形になってホクホク。
kszさんに聞くと、プログラム的にはさほど難しくなく、プロトタイプも終電までには出来そうだとの話なので、Unityはkszさんと松田くんにお任せし、デザイナー会議および他チームのスパイ活動へ出掛けます。
デザイン
ほどよくリーダー不在時間を作って帰ると、いろいろアイデアが生まれていました。メンバー皆、指示されなくても自分たちで考えて楽しむ人達と分かり嬉しかった!キャラクターを抽象的な物にする案とか、ゲームをより複雑にする案とか、いくつか聞かせてもらったのだけれど、嬉しいと同時に、企画の軸が伝わっていないのを察知。いったん全て忘れてもらって絵を描くことに。
ホワイトボートと口頭説明だけじゃ、まだ誰もイメージ出来ていない。それにどうしても巨大な存在を前にすると戦ったり倒す発想が生まれる。違うのだ。競走馬を飼う様な関係なのだ。『懐いて付いてくるでっかい動物をゴールまで導くタイムを競う、遊牧民族のスポーツ。』間違って踏まれたら死んじゃうだろうけど、敵意はない。愛情に満ちた競技。
デザインは『シンプルで、わかりやすく、他と違う。』
だからまず人型を外しちゃいけない。モンスターのようなトゲもダメ。翼もダメ。脚や腕を増やしてもいけない。怖くしちゃいけない。この動物は普段何を食べるんだろう?ぶつくさと呟きながら絵になって来たところで、菅原さんがツノを付けるアイデアを見せてくれた。以前Ludum Dareで作ったEncounterのキャラにも見られた特徴的な(ひっくり返すと脚みたいな)ツノだ。
動物として牛の印象は調度良い。デザインも程よいシンプルさと特徴。スポンサーのレッドブルも牛。そして日本語で『赤べこ』(初期は小さい方のキャラクターに考えていた)
・・・たぶん和牛先生の名も引っ掛けている。
OculusRift、現る。
自己紹介のとき「私は見学みたいなものなのでー」と遠慮していた本田@hiroyuki_honさんが、OculusRiftを取り出したのはこのタイミングだったろうか。我々『Oculusが何かは知っているけど実際に見たことは無い』勢がどよめいた。巨人を見上げるコンセプトに最適すぎてヤバい!まるで初めから企てていたかのような運命的アイテムの登場であった。
Oculusとは、開発者向けに販売されているヘッドマウントディスプレイで、立体視はもちろんのこと、頭の向きや角度を感知して、プレイヤーの向いた方向が見えるという未来デバイスなのだ。
さっそくデモを見せてもらうと、写真がぐるっと見渡せる!手前に写った人物が超でかい!MMDっぽい町並みが移動でき、そびえ立つチェルノ・アルファがでかすぎる!酔う!見上げるという行動が伴うと、同じ絵でもスケール感の桁が上がる。今作で目指している巨大感が、Oculus体験で一気にチームに共有できてしまった。
スカルプトモデリング(非3DCG)
私は粘土造型にも慣れているので、道具だけを提供して、デザイナーの菅原さん、プリニーくん、自称雑用係三浦くんにファンドやエポキシパテをこねてもらった。これを再現する形でCGを作る。UnityのシェーダーはCG臭さが半端ないので、粘土で空想した世界で遊ぶゲームを想定し、写真テクスチャを貼りこむ作戦だ。へたくそゆえの指紋や皺やひび割れがリアルさを出す。
テクスチャーペインティング(非3DCG)
3DCGやBlenderやUnityの話を期待している方にはもう少し待ってもらおう。誰にでもできる確実な手段は仕事でやれば良い。私はGGJを全力で遊ぶために参加しているので、いつもの遊びで蓄積した手法やアイデアをいっぱいミックスして試す。世界広しといえども我々にしか作れないゲームを作る。
札幌は特に個性的なチームが多く、また奇抜なだけでなく高いレベルで必ず完成させるのが自慢だ。(アナログチーム、ファミコン実機動作チーム、ひとりチーム、etc)
ここでは珍しく私も作業。地面のテクスチャを描きました。筆を使わず、紙切れやティッシュを使って複雑な柄を出します。
SculptModeling
そしてようやく3DCGモデリング。個人でZBrushライセンス買っちゃった系意識高いCG学生山猫くんに、キャラクターモデリング(オイシイところ)を全ておまかせ。ZBrushでモデリング、ZRemesherで減らしてBlenderへ。UV、TexturePaint、Boneを設定してUnityへ。今回も.blendファイルで受け渡しです。
3D Animation
プログラマが休憩に帰っている間、デザイナーは可能な限り素材を用意します。山猫くんがテクスチャ進めている間に、私がボーンとアニメーションを作りました。とにかく急いで本番モデルと同じ構造の仮モデルを表示させてみないと、Unity作業もやりにくい。(そういえば初日からWindowsアップデートでUnityのテストファイル消えましたね、恐るべしマイクロソフト!)
ゲーム部分の悩み
眠りに帰るとき、必ずホワイトボードに現状を書き残して行きました。デザイナーはコレ作ってプログラマに渡してね、手が空いたらコレ作ってね、残りのタスクは何と何と・・などなど。そうすると後回しにしていた致命的な問題が思い出せます。今回で言えばゲームマップです。アカベコ用迷路の作り方、そしてそれを面白くする地上の障害物。
これはUnityテスト用に作った仮モデルで、初級・中級・上級の3コースをレベルデザインするため、簡単に作り直せる事も重要でした。テキストファイルに応じて障害物を配置する方法など可能ですよと提案頂いたけれど、見た目を犠牲には出来ず悩むことに。
しかし考えていれば何でもヒントになるものですね。眠い目をこすりながら地下鉄に乗ると、『選んだ道で距離に差が出る、見た目にも美しいマップ』が足元に描かれているではありませんか・・!もうこの模様マップにしか見えません。
眠気も吹っ飛んだので、帰宅後すぐにBlenderを起動。これを素早く絵にして、チームの人達に伝える必要があります。
斜めに複雑な切れ目の入るマップ、カッコイイ!
最初にコース全貌を見せて、最短ルートを短期記憶につめ込ませようというアイデア。覚えられるんだけど、地上の障害物を避けてるうちにわからなくなっちゃうバランスが取れると面白そう!
この2つをDMで送って3時間だけの短い眠りへ・・
しかし実はこのアイデア、説明不足でうまく伝わっていませんでした。オープニングカメラはばっちり完成していましたが、迷路そのもののデザイン案であることが伝わっていなかったので急遽説明。リーダーの居ない間に現場で考えていたアイデアよりもこっちが良いと皆の意見が一致したので、三浦くんにマップデザインをお願いすることに。
後に等幅化のためデジタルで仕上げてもらいました。
一気に完成へ
48時間濃厚すぎて時間軸を思い出せないので、まとめて書き出しますが、菅原さんとプリニーくんにはタイトルロゴのデザインと3DCG化をお願いして、互いの得意を活かすナイスコンビネーションで仕上げてくれました。音楽をお願いしたら明るいイメージが降りてこなくて苦労していたmanzyunくんも、アイルランド音楽をイメージした最高のBGMを作ってくれてから絶好調。実装できなかったけど、深みのあるいい足音も作ってくれました。菅原さんには主人公キャラを別でデザインしてもらい、いい感じに力の抜けたコイツを山猫くんにモデリング、アニメーションしてもらう。
本田さんとkszさんのタッグでOculus表示もバッチリうまく行き、多少の問題(空から降りてくるカメラをOculus対応に出来ない・SkydomeがFogで消える・ゴール方向を見失う・クリアタイムの記録と順位間に合うか!?etc)を乗り越えながら完成へ向けて猛ダッシュ。最後はもう素材屋が何か出来る時間じゃないので、作ったけど載らなかった素材は当然いくつも出てきます。あと画作りまでお任せ出来ちゃうプログラマkszさんすげぇ。専門分野じゃないのでどうしてもサイズが〜画角が〜照明が〜みたいな話になりがちですが、なりませんでした!
私のお仕事は、冷めたピザを6班のゲームだと言い張るデマ画像を流したり、
チームメンバーに深煎り珈琲を振舞う『喫茶和牛』をオープンしたりです。
そして発表前、チーム内Oculus試遊会!役得ヤクトク!
遊ぶ本人も「うわ、でけーー!こええええぇぇっ!!!」って超楽しいんだけど、それを見てる側も超楽しいのです。なぜなら突然振り返ったり、なぜか中腰に踏ん張ったり、手を伸ばしてみたりと、アクションが面白いんですね。Oculusは視線に追従しないので、横を見るには横を向く必要があり、後ろを見るには真後ろを向きます。これが見ていて面白い。プレイヤーは器用にすぐ慣れますから、普段目で行う視線動作の役割を頭全体で行うのです。
発表会と懇親会
発表会では初見のプレイヤーが遊んでいる姿を見てもらいたく、昨年のGGJ札幌オーガナイザーgiginetくんにお願い。楽しそうに動きまわってくれたおかげで会場も盛り上がりました。うっかりゲームルールの説明を忘れてしまって時間内にゴールは出来なかったけど、「続きは懇親会で!」と機転を利かせてくれたので、本田さんよりOculusRiftをお借りして懇親会でアカベコ体験会を開催。買ったばかりのハイスペックPC貸してくれた5班geekdrumsくんにも感謝!
順番待ちが絶えることなく、「やってみたい!やってみたい!」と沢山の方々がアカベコと対峙して行きました。必要以上のオーバーアクションはゲーム世界への没入の証、kszさんが理想に挙げた『つい身体が動いてしまうようなゲーム』がここに実現したのです。すっかりゲーム慣れした人達の身体を動かした偉業を讃えて、SFC版F-ZEROと共に歴史に名を残すべきゲームの誕生です。
自画自賛
Oculusスゴイ。とよく言われましたが、我々もスゴイ!
だって現状、Oculusを活かしたゲームどころか、既存のゲームが稀に対応するかしないかだと聞きましたよもったいない!こんな面白いモノが3万円そこそこで買えて、Unityで開発できちゃうんだからもっと遊びましょうよDevelopment Kitでしょコレ!
アカベコは、自分が周囲の迷路を把握しながら進む必要と、ついてくるアカベコの位置を確認するため振り返るアクションが自然と行われます。また、影による位置把握や、接近しすぎた時の見上げ、さらに体験プレイ中にはアカベコが侵入できない天井に隠れて、覗きこむような仕草をする方も居ました。
多くの人達が必要もないのに膝を曲げて身構えたり、もっと没入すると『映画泥棒』みたいな動きになったり。ほんとうに面白いので、Oculusをお持ちの方はぜひ多くの方に体験させてあげてほしいです。布教班もっと!もっと!
実はGGJ終えてからOculusで遊びたいアイデアがいくつか浮かんでいます。自宅のお風呂で入浴剤をはるかに超える温泉気分装置(絶対にレンズ曇りますね)とか、Oculusで地球防衛軍シリーズやギガドラが遊びたい(けど公式には出ない)ので、スケールが気持ち良いオリジナルゲーム開発とか、さらには映像作品にも可能性を感じています。2Dゲームと3Dゲームが共存するように、カメラ固定映画とVR映画があっても共存しうると思うので試したい。
あぁ、時間と予算と開発チームと機材があれば、グラフィック凄いでしょ?デモとは別ベクトルで面白いものいっぱい作るのに・・っ!
去年の経験値
最後に、3年目になったGGJですが、やはり今年も前回の経験が生きていて、しっかりレベルアップ出来てるなと実感しました。今年の最重要ポイントは『完成』です。デザイナの様子はちょっと見れば分かりますが、プログラマのお仕事は何が簡単で何が難しく、どのくらい時間かかるものなのかサッパリ分かりません。
ただ、どの役割も皆「最初に決めた必要な物を全部作ろう」とするので、手を付けた順番でこぼれがち。素材は欲しい順位やタイミングもそれぞれですし、後半ギリギリまで作ってるデザイナの「せっかく素材作ったから載せよう」も危険。プログラマには常に負担が集中するので、わからないことは聞いて、積み上がった仕事も聞いて、最優先を決めて、無くても困らない要素は切り捨てる、あるいは面白さの軸をブラさず組み替えることで、完成へ導く役割が必要です。
今年は極力自分で作らず、人に任せることで何倍も良い結果に導くという理想を経験する良い機会になりました。引き続き自主制作映像にとりかかってゆきますEF-12のコンテストも出したいです。GGJ2014札幌6班より、アカベコよろしくっす!
Mac版公開しました!