僕のキャラクターが東京ゲームショーでデビューするらしい。
EF-12コンテストでキャラクター部門2位を頂きました!
前回のエントリーでメイキングを紹介したキャラクター、Montaukがコンテストで2位を頂き、東京ゲームショーに出展される『EF-12』に組み込まれることが決まりました。TGSバージョンのEF-12はダウンロード提供もされるそうです。
1位のymt3Dさん、さすがのクオリティ 。使いたくなるキャラクターデザインに細部まで丁寧な作り込みで説得力が違いますね。僕の「最終画面で目立たない粗は気にしない」性格は少し反省すべきかもしれません(笑)
さて、今回のエントリーはこのキャラクターデザインが出来上がるまでの道のり。前回の続きだから、以下の記事と合わせて読んでもらえると嬉しいな。(とはいえ内容は専門的すぎるけど)
コンテストに向き合う
実のところ格ゲーには全く興味が無かった。eスポーツもあまり良くわかってない。EF-12についてもMMDくらい他人事で面白そうなツールだなあと見守っていたんだけど、3DCGのコンテストという懐かしい響き、そしてBlender賞という謎のBlender優遇に釣られて興味を持ってしまったのだ。とはいえ賞品はオマケのようなもので、最大の魅力は東京ゲームショー出品作に組み込まれるという事。学校の先生もたまにはコンテストで泊を付けて、学生や職員さん達に安心感を維持してもらわなきゃね。
今回求められるキーワードは「未来的、サイバー」「サイボーグ、アンドロイド、アバター」とされ、TRON LEGACYのような光るラインを含んだSFキャラクターが例に上げられた。標準キャラを見る限り、もう少しメカっぽくアイアンマンやロボコップ、ゲームだとCRYSISのようなアレンジがあっても良さそうだ。
初めはそれだけで要求するモノが分かったような気になった。「あ〜ナルホド、あんな感じね?」というやつだ。しかし実際にノートに描き始めるとそう上手くは行ってくれない。それも思った以上にダメだ。細部どころかシルエットからして酷い有様で、どんどん要求するものから離れてゆく。それもそうだろう、デザインというのは引き出しの少ない人間が一夜漬けでどうにかなるものじゃない。若者はこういうとき「頭のなかにはあるんです!」と言いがちだけど、そんなものは存在しないと知っているお年頃。
▼積み上がる駄作の山・・ここで諦めないから結果につながる。
キャラクターをデザインするときに考える事
この辺から気持ちが本気になって来る。必要なのは自分の中にブレないコンセプトを明確にすること。まず向き合わなければならない問題は自分自身格ゲーに興味がない事実。もちろん昔は好きだった。NEOGEOのROMを持ってるくらいには好きだったが、複雑化するシステムについて行けなかった。だって自分が操作するとCPUよりも鈍臭く動くんだよ?こうなると爽快感など欠片もなく、やれどもやれども勝てないゲームはいつしか楽しくなくなった。
しかしそれ自体を否定しては競技にならない。高度なゲームシステムでかつ腑に落ちるには?通常、eスポーツは普通の市販ゲームを使って行われるようだが、専用に開発されるゲームとなると少しばかり自由な発想をするのも悪くない。例えば武術ではなくスポーツの試合と考え、相手を倒し立ち上がれなくするのではなく、一定ポイント先取で勝利すると考える。行われることは全く同じでも、「相手との戦い」から「自分との戦い」へと意味が変わる。気持ちの問題だが、これなら「あの相手から何ポイント獲れた。もっと獲れるようトレーニングモードで練習しよう」なんて考えにもなりうる。相手を倒す目的では、「勝てた、負けた、あいつには勝てない。」と中間がないのだ。あるいは「何ポイントも獲られた接戦だった」と敗北した相手の力量を認める要素になるかもしれない。プレイヤー達に対戦相手をリスペクトする姿勢が広まり、それが競技者である誇りとなる。
さて、そうすると審判が存在するかもしれないし、装備が自動判定する誤審のないスポーツという電子ならではの世界観を表現できるかもしれない。SF風のスーツは相手を空中に飛ばすほどの腕力を発生させると同時に、その衝撃から身を守る。見た目に激しい戦いが繰り広げられるが負傷者は出さないことで、純粋に技量のみを競う未来の、あるいは電子のスポーツとなる。
そこには流派が存在し、道場があり、師弟関係が生まれるかもしれない。個人戦の他に、一門の教えの優劣を競うチーム戦が生まれるかもしれない。老師はレギュレーションの中で技を作ったり、スーツを作ったりするのかもしれない。スーツは道着のような扱いになるだろう。こうなると戦っているのは現在主流の個性豊かなキャラクター達ではなく、自分自身であるという印象に移ってくる。近年のRPGで種族や得意な装備を選び、自分のキャラとしての実感と、同じ種族への同胞意識を持つような感じだろうか。スポーツ選手のカードを集めるように、スタープレイヤーのキャラクターカードがコレクターアイテムになるだろう。
コンセプトをデザインへ
さてその仮定した世界観をキャラクターデザインへと落とし込んでゆく。全身の安全、攻守に使う部位は特に安全に。首は危険な角度に曲がらぬよう隙間を埋め保護する。それでいて全身動きやすい。汗が蒸れないよう、空気が循環する、あるいは肌着が体温を調整する。未装備で訓練するだろうから、スーツ着用の違和感を減らすため極端な凹凸を避け、シルエットは人型を逸脱しない。カラーリングにはスポンサーの意匠が反映される。構えた姿勢、多く映るカメラアングルを考慮した一体感のある配色。さらにスポーツで重要なのは、スーツの中の選手個人のキャラクターだ。これをモーションと頭部の装飾で表現することになる。
▼徐々に完成デザインへ近づいてゆく。
▼通勤電車の中でも考え続け、iPadに描き残す。
光る要素については最後まで理由を考えられなかったのでデザインには含めなかった。初期はこれを電源の供給と考え、衝撃の少ない背中を伝わせているという案を考えたが、iPhoneを眺めていると各パーツごとに小型のバッテリーを持っている方が未来的に思えてきたので、却下した。
▼アイデアメモより。
今回のデザインについては、上記の枠の中で、さらに一つの流派の思想を含んだものとして装飾した。スピード感、軽快さ、洗練されたイメージを持たせるため、モチーフにはモータースポーツのデザインを意識。打撃技が美しく見えるシルエットを作るため、脚部は人体そのものではなく、道着で直線的になったシルエットを採用。頭部のデザインは競技者個人の性格を表す要素になるので、世界観の基準となる主人公らしさを表現することにした。しっかり前を見据えた覇気あふれる男で、前へ前へと攻め込むアグレッシブな技を多く持つ。そんなキャラクターをイメージし、正面から攻めこむ力強さを見た目でしっかり伝えるデザインとした。
▼頭部デザイン案の数々。鎧兜は捨て難かった。
数々の問題と突破口
文字に起こすと簡単そうだけど、実はそんなにスマートには行かなかった。ここまで明確にするのに2週間以上もかかっているんだ。立体に起こすのも、最初はスカルプトではなくBlenderでモデリングするつもりだった。でも困ったことに、どう見てもFPSの脇役にしか見えないんだ。たくましいシルエットでSFスーツを作ると自然にそうなってしまう。そこから脱却するために多くの画像を検索したよ。どうしたらFPSじゃなくなる?どうしたら主人公になる??一番参考になったのは11月に発売予定のリボルテック雷電だった。このシルエットは一つの突破口になったよ。出来上がったキャラクターは似ても似つかない姿だから、参考にしたとは気づかないだろう。自分の中で噛み砕いて反映させると、切り貼りではない最適な形で再構成されるんだ。
▼Blenderでのモデリングテスト。格闘より銃が似合う。
▼同時期のスカルプト。やはり銃が似合う。
同じように配色にもとても悩まされた。鉛筆のスケッチもモデリングも無彩色で、自然と頭の中のイメージもグレートーンの金属質なイメージに凝り固まってしまったんだ。でもいよいよ決めなければいけない時、レーシングスーツを参考にすることを思いついたよ。おそらく多くのSFスーツのデザインがレーシングスーツを参考にしていると思うけど、配色にこれを用いる例は見たことがない。これは奇跡の閃きで、無彩色から真っ赤な姿へとイメージは一変したんだ。
▼これは撮影した画面の上からiPadで配色を塗り足したもの。ヘルメットの形状もここでデザインしている。造形と配色の継ぎ目は一致させていない。これはレーシングカー同様、スポンサーにより自由にデザインされることを表現している。
同じくiPadを使用して、キャラクター用にEF-12ロゴをデザインしたりもした。本当は脚部にあしらう予定だったけど、文字要素がたった一つではバランスが取れないので不採用となった。テクスチャの使われない部分に残してあるよ(笑)
次回予告
さて、僕にとってある程度のモデリングまでがデザインの工程に含まれているけれど、ぱっと見ほぼZBrushで作られたこのキャラクターの、どこにBlenderが使われているのかを次回語ろうと思う。ここにも数多くの試行錯誤があったんだ。