うしろぐ

作ってあそぶよ

Blender CGイラストテクニックのカバーメイキング。

本日7月13日は【無料ではじめるBlender CGイラストテクニック ~3DCGの考え方としくみがしっかりわかる】の発売日。ということで、皆さんに見つけてもらう目印になります、カバーイラストのメイキングでも書こうかなと思います。

 ラフスケッチを描く。

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これが最初のラフスケッチ。通勤時間を利用して、iPadProのProcreateで描きました。「みんな、自分の作りたい絵を描けるように」という思いを、リビングで自由にのびのび飛び回る小さな飛行機として描きました。

書籍名や著者名など入る場所を想定して、情報量を減らしておきます。

 

背景にはチャプター02の扉絵を使いますので、必要になるモデルは飛行機と、不足があればテーブルの上の物です。

おもちゃの飛行機ということで、絵ではサラッと描きましたが、モデリングするには資料がほしい所です。おもちゃのデザインってとても洗練されているので油断なりませんし、飛行機好きな方に「なんじゃそりゃ」と言われるのも切ないですからね。

 資料を検索する。

さっそく検索して、好みのシルエットの玩具や

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/kurashicom-images/colorme/PA01034/348/product/39612209_o2.jpg

http://hokuohkurashi.com/?pid=39612209

 

自作っぽいステキな造形の模型を発見。

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-f2-85/a6m2bkm251/folder/1510277/40/58089540/img_1?1232200254

http://blogs.yahoo.co.jp/a6m2bkm251/58089540.html

 

さらに実機で可愛いのが!

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デザインする。

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まず形を知るためにスケッチをします。そして徐々に自分のアレンジを加えてゆく。全体のバランス、デフォルメ加減であったり、翼の形であったり、タイヤ周りをどうしようか、乗り込む部分をどうしようか、などなど。たくさん絵に描くと、形が頭に入ってきてモデリングの時も迷いがなくなります。目で見るのではなく、手で見る。という感じです。

モデリングする。

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そんなふうに再構築・モデリングしたのが、この飛行機。デザインした絵や形だけでなく、やはり作るときにも資料を観察するのが大事です。実際に飛んでいる絵にするので、玩具っぽさとリアルさをうまく融合すべく、部分的に細かいディテールを入れました。

 シーンを組む。

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まずは配置してみます。別のファイルから読み込むには、舞台のファイルを開いた後に、「ファイル>アペンド」で飛行機や箱クマの.blendファイルを選択し、Objectフォルダの中から必要なオブジェクトを全て選択し、「ライブラリからアペンド」します。

配置できたら、仮レンダリングで問題点を見つけ、姿勢などを見直していきます。Ctrl+Bで部分レンダリングできるので、狭い範囲だけを素早くレンダリングします。(解除はCtrl+Alt+B)

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 ポーズや飛行機の姿勢、それに光源の向きも変更しました。翼がエンジンカバーに重なっていたのも修正。悪くないので、いちど全体をレンダリングして画像を保存しておきます。少し時間を置いて見なおしたり、改善策を試してから、本当に良くなったのか見比べたりするためです。 

 

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グラスの配置や色を変更することで、主人公がより目立ち、奥行き感も出るようにしました。プロペラの向きも変えて、顔に重ならないように。

 

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さらにカメラを少し傾けることで、スピード感を演出します。地平線が傾いたその不安定さにより、見る人は迫力を感じます。

 

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絵に暗い部分がなく、全体的に締りがないので、改善案をペイントしながら考えます。上部には書籍のタイトルが入るので、奥の壁などは情報量の少ないままでOK。

室内全体が明るいため、映り込んだ景色も単調になってしまっているので、奥に部屋やキッチンがあって暗い状態を想定した映り込みを描き足しました。また、テーブルの上の隙間が多いので、アメを配置しました。

 

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暗い部屋の映り込みと、アメを転がした状態です。包装のデザインは後回しにして、まず全体を見ます。あと、印刷時のトリムで絵の周囲が切り落とされるのを警戒し、塗り足しの分だけカメラを引いています。

 

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ここで、先に送っていた画像を元に、カバー案が送られてきました。左下の空間に文字が入り、アメが無くてもバランスの取れた絵に仕上がることがわかりました。トリムについても、デザイナーさんが上手に仕上げてくれているので、カメラ位置を戻して、アメを削除することにしました。

仕上げのレンダリング

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これを印刷用の大きなサイズで、ノイズが無くなるまでレンダリングしたものです。GTX780を使用して50時間少々かかりました。この間、Windows10の自動更新やスリープ、再起動などを徹底的に阻止しておかなければなりません。

また、画像はOpenEXR形式で保存し、PhotoShopフィルターのArionFXを使用して、トーンマッピング(色調整)と僅かに残ったレンダリングノイズの除去を行っています。

のちに、細口ポットの先端がチャプター02の作り方のままでカクカクな事に気付き、そこだけ作り直してレンダリング、合成しました。

プルーフ(校正刷り)のチェック。

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PCで見たものと印刷とは、どうしても色が変わってしまいます。「背景のねずみ色が印刷すると暗く見えるので、白めに調整したら明るく透明感が出ませんか?」という修正チャンスを頂けたので、改善策を模索します。

アドバイス頂いたとおり明るめにすると、室内として違和感が出ました。どうやら原因は他にある様子。そもそも赤みのある色温度で、となりのオレンジ色、明るいグリーンとの相性がとても良かったこのカバー。赤みが落ちてねずみ色に見えるのが原因のようです。試しに赤みを足して本来の色に近づけると、同じ暗さでも沈んだ印象にはなりませんでした。

そこで頂いたプルーフをスキャンし、画面上の色を、目で見ている色へと調整。ここから本来の色に調整した調整レイヤーを印刷用画像に足して、赤みの増した画像で再チャレンジしました。

 そして書店へ。

書店に並んだカバー画像は、プルーフより赤みが増した温かいイメージとなり、背景に重たい印象を受けなくなりました。もしかしたら印刷色の調整をしてもらっているのかもしれません。本文中の作例画像も、非常に色再現の難しい絵ばかりで心配していたのですが、これらも見事に再現していただきました。他の書籍を見る限り、人の手が入らないとこの色は絶対に出せません。多くの人に助けられてこの本が出来上がったんだなと実感しました。

 

最後の印刷周りのお話は、個人で楽しむ場合はプリンタの色再現との闘いになります。最近はプリンタを買うより、プリント機を使ったり、写真出力サービスを使ったりする方が安上がりかもしれませんね。

 

以上、本には載っていない、カバーイラストメイキングでした。

みなさんが3DCGを楽しい趣味にできますように!

HappyBlending!!